「なくなると困る」防蝕ゴムライニング材を継承|Vulcofix®の製造販売権・商標・設備・技術を引き継いだ事例

ゴムライニングは、決して派手な仕事ではありません。

しかし、化学プラント、タンクローリー、水処理設備、配管、発電関連設備など、日本の産業を支える現場では、今も欠かせない技術のひとつです。

特に、強酸・強アルカリ・薬液などを扱う設備では、FRPや樹脂だけでは耐えきれない環境も存在します。

そうした現場で、長年使われ続けてきたのが、大機ゴム工業株式会社(千葉県柏市)の防蝕ゴムライニング材「Vulcofix®」でした。

しかしある時、そのVulcofix®が“なくなるかもしれない”という話が現実味を帯び始めます。

ゴムライニングとは?

ゴムライニングとは、タンク・配管・プラント設備などの内面へゴムシートを施工し、薬液・腐食・摩耗などから設備を保護する技術です。

FRPや樹脂では耐えられない環境でも使用されるケースがあり、化学・発電・水処理・食品など幅広い分野で利用されています。

目次

きっかけは、一本の電話から始まった

もともと小暮ゴムでは、大機ゴム工業様へゴム練りを納入していました。

きっかけは、当社からの営業活動でした。

当時、小暮ゴム側から直接ご連絡を行い、その後少しずつ取引がスタート。実際に複数の配合をご採用いただき、品質面でも高い評価をいただけるようになっていきました。

そうした関係が続く中で、ある時、大機ゴム工業様側から「事業継続が難しくなる」というお話が出てきました。

Vulcofix®は、長年にわたり現場で使われてきた実績あるライニング材です。

もし供給が止まれば、困るユーザーが全国に存在する。

実際、

「この材料がなくなると設備維持が難しい」
「代替が簡単に見つからない」
「長年使ってきた実績がある」

という声も多数いただいていたそうです。

単なる”古くからある製品”ではなく、日本の現場で今も必要とされている材料だったのです。

「配合をもらえば終わり」ではなかった

今回、小暮ゴムが引き継いだのは、単なる製品名ではありません。

Vulcofix®の製造販売権・商標だけでなく、配合・接着剤・製造設備・シート製造ノウハウまで含めた継承でした。

さらに、大機ゴム工業で社長経験もある技術者の方にも顧問としてご協力いただき、製造立ち上げを進めていきました。

しかし実際には、「配合を引き継げば同じものが作れる」という単純な話ではありませんでした。

ゴムライニング用シートは、一般的なゴム練りとはまったく性格が異なります。

特にVulcofix®では、天然硬質ゴム(NHR)や自然加硫ゴム(IIR)など、取り扱い難易度の高い材料も多く使用されています。

しかも、ゴム種によって収縮挙動が大きく異なるため、押出条件が少し変わるだけでも、

  • シート肌
  • 厚み
  • 平坦性
  • 寸法安定性

に大きな影響が出ます。

中でも特に難しかったのが、「シート厚みの安定化」でした。

ライニング用ゴムシートは、単純に押し出して終わりではありません。

押出直後は同じ厚みに見えても、冷却後や保管後に収縮差が発生し、厚みが微妙に変化することがあります。

しかもライニング材では、この“シート品質”がそのまま施工品質へ直結します。

施工現場では、

「シートがうまく貼れない」
「ヨレる」
「局所的に厚みが違う」

といった問題が、そのまま施工性や耐久性へ影響します。

つまり、「ゴムができればいい」では成立しません。

高精度の厚み調整、冷却、保管、品質管理、出荷体制まで含めて、はじめてライニング材として成立します。

また、押出工程そのものも非常に繊細な作業です。

Vulcofix®用シートの押出では、口金部に複数の調整ボルトが設けられており、シート各部の厚みを見ながら微細な調整を行っていきます。

製造時には、押出中の材料流れ・温度・収縮状態を見ながら、職人が少しずつ調整を繰り返し、シート全体の厚みバランスを合わせています。

特にライニング材では、厚みムラが施工性や品質へ直結するため、この調整精度が非常に重要になります。

単純に「機械で押し出せば均一にできる」というものではなく、長年の経験や現場感覚も必要とされる工程です。

実際、立ち上げ当初は思うように厚みが安定せず、大機ゴム工業時代の技術者の方にもご指導をいただきながら、小暮ゴム側でも試作・調整を何度も繰り返しました。

最終的には、小暮ゴムの熟練職人による現場調整とノウハウ蓄積により、従来品質の再現を実現しています。

シートの厚み調整の様子

超大型押出機を、そのまま小暮ゴムへ移設

旧大機ゴム工業より大型押出レーンを搬出している様子

今回の継承では、大機ゴム工業所有の超大型押出機も小暮ゴム工場へ移設しました。

もともとVulcofix®用に使われていた設備を、そのまま引き継いだ形です。

しかし当然ながら、設備を移設しただけで従来品質が再現できるわけではありません。

  • 押出条件をどうするか。
  • 収縮をどう管理するか。
  • シート肌をどう合わせるか。

試作・検証を何度も繰り返しながら、従来品質の再現を進めていきました。

また、ゴムライニングは材料だけで完結するものではありません。

現場施工との整合も必要です。

そのため、施工を担当していたお客様との連携も取りながら、供給継続できる体制を整えていきました。

なぜ、そこまでして残したのか

正直に言えば、ゴムライニングは決してラクな分野ではありません。

  • 材料管理も難しい。
  • 設備も特殊。
  • ニッチ市場。

しかも、取り扱う材料も難易度が高い。

それでも小暮ゴムが継承を決めた理由はシンプルです。

「現場で必要とされ続けている技術だったから」。

実際、FRPや樹脂だけでは耐えられない環境は今も存在します。

また、Vulcofix®には長年積み上げられてきた実績があり、食品衛生法適用材など、大機ゴム工業時代から培われてきた技術の蓄積もありました。

もしここで供給が止まれば、困る現場がある。

だからこそ、小暮ゴムでは、「単に製品を残す」のではなく、“技術ごと継承する”ことを重視しました。

練り屋だからこそ、一貫対応できる

現在、小暮ゴムでは、

  • 配合設計
  • ゴム練り
  • シート製造
  • 冷凍保管

まで、一貫して対応しています。

これは単なる製造継承ではなく、「将来的に環境規制や材料変更が必要になった場合でも、再検討・改善できる状態」を維持するためでもあります。

  • 配合を理解している。
  • 材料を理解している。
  • シート化まで理解している。

だからこそ、長期的に供給責任を持てる。

小暮ゴムでは、その状態を重視しています。

小暮ゴムよりコメント

ゴムライニングは、決して目立つ技術ではありません。

しかし、日本の産業インフラを支える現場では、今も必要不可欠な領域です。

小暮ゴムでは、Vulcofix®の継承を通じて、単なる製品供給ではなく、「現場で必要とされる技術を、継続して残していくこと」を重視しています。

防蝕ゴムライニング材、ゴムシート、配合設計などについても、お気軽にご相談ください。

→ ゴムライニング・Vulcofix®のスペック・納入ロット等の情報はこちら

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